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後で泣くことがないように…
インスペクション会社からの忠告

■ハウジング・ナビという住宅インスペクション(検査)会社があります。住宅の専門家の立場から、契約書・設計図書・現場をチェックし、問題点を指摘してくれるのです。チェックには15〜25万円の費用が必要ですが、「高い金額ではなかった」と思えるケースも少なくないようです。

■同社の経験では、これまでに検査した住宅では、基礎の90%に問題があったそうです。基礎は下請けの専門業者に工事をまかせることがほとんどで、それを現場監督がチェックしていないこともあるのです。

■建売住宅の場合は、実物を見て購入するわけですから、最終的には自分の責任になります。しかし、素人に問題点を発見できるわけがありません。契約前の段階で、ハウジング・ナビのような専門家に実物を見てもらって、安全性を確認する方法があることを知っておいてください。

阪神大震災で被害を受けた住宅には、1981年の建築基準法改正の後に建てられた住宅も含まれていると前に触れました。そのほとんどは、施工に何らかの落ち度があったことが原因と判明しています。家をつくるときに、業者にまかせきりにするのではなく、建て主自身がチェックすることは大切です。

自分の判断だけでは不安ならば、専門家に相談する方法があります。<新築編第9回>では、国土交通大臣が指定する評価機関に設計・施工をチェックしてもらう方法を紹介しました。今回は、民間のインスペクション(検査)会社として、多くの実績を持つ東京のハウジング・ナビを紹介しましょう。

専門家がアドバイスをする
 
「建て主は、自分の身銭を払って買う住宅をもっと真剣に考えてほしい」。ハウジング・ナビの「住まいの検査員」、重松正祐さんはこう話します。重松さんは、一級建築士で木造住宅専門の設計事務所の所長でもあるという、ベテラン建築士です。

住宅は高価な買い物です。購入するものが払うお金と同等の価値があるものなのかどうか、本来なら一番注意を払わなければいけないものです。

ところが、「専門的なことはわからない」と業者にまかせきりにしていたために、後で「こんなはずじゃなかった」と被害を訴える人は大勢います。事前にチェックしていれば、多くの問題が未然に防げますが、素人である建て主が、問題点を発見し、現場監督に修正を要求するのは無理でしょう。

ハウジング・ナビは、専門家がユーザーのサイドに立ってアドバイスをする会社です。素人では気づかない、構造上の安全性、断熱、防水などを重要なポイントとして、設計・施工をチェックし、修正すべき点を指摘します。

家を取得する方法は、(1)住宅メーカーや工務店に設計・施工を依頼する、(2)設計事務所に設計を依頼し、施工は工務店に発注する、(3)建売住宅を購入する、などさまざまです。ハウジング・ナビでは、どの場合にも対応できるように、コースをいろいろと用意しています。

工事検査サービスは3回、4回、5回と3つのコースがあり、それぞれ、15万円、20万円、25万円となっています。この他にオプションメニューとして、見積書や契約書、設計図書のチェックがあり、地盤調査や建売住宅・中古住宅の調査も引き受けています。

「本来なら契約前に相談に来てほしいのですが、残念ながらほとんどの人が現場が始まってから、何かおかしいと気づいて連絡をしてきます。現場が進んでいても、直せる余地があれば、われわれの出番です」と重松さん。実際にどんなチェックを行っているのか、具体的な例を挙げて説明してもらいました。

図面はよいが施工に問題あり
 
会社員のAさんは、首都圏の中堅建設会社B社に家づくりを依頼しました。B社はアメリカの2×4住宅の仕組みを取り入れ、新たに事業展開を始めたばかり。Aさんは土地を購入し、B社と契約する前に図面を持って、ハウジング・ナビに相談にきました。

図面はとてもよくできたものだったそうです。ところが、基礎工事で、鉄筋を捨てコンクリートの上に配筋した状態をチェックしに行くと、鉄筋の被覆厚みが不足することに気付きました。型枠に鉄筋が接触しているところもあります。このままコンクリートを流し込めば、鉄筋が外気に触れ、腐食してしまうのは目に見えていました。

重松さんは、Aさんに建築基準法違反であることを告げ、修正を指示するようにアドバイスしました。ハウジング・ナビはB社と契約関係にはないので、修正を強要できません。Aさんは止めきれず、現場は強引に進行してしまったそうです。その後も頑張って交渉を続け、1カ月後にやっとB社が承諾し、立ち上がっていたものをすべて壊して、更地の状態に戻してからやり直しました。

また、現場監督が2×4の仕組みを習得していなかったため、上部の建物にもミスがありました。この住宅は外壁通気工法を採用し、棟換気をとる方法でしたが、肝心な棟換気口に穴が空いていなかったのです。それを重松さんが指摘すると、基礎の事件の後だったので、速やかに修正してくれたそうです。

最終的には無事に完成し、耐震等級2に相当する性能をもつ家となりました。もし、現場のミスを見逃していたら、建築基準法違反ですから、耐震等級は1未満です。「施主の行動次第で、完成形は大きく変わります。選んだ会社の施工レベルが低かったとしても、それは施主の自己責任ですからね」。

最初にハウジング・ナビに依頼したときは専門的なことは何も知らなかったAさん。基礎の問題点を指摘されてから、インターネットや図書館で木造住宅の勉強をいちから始めたそうです。重松さんは5回しか現場には行きませんでしたが、Aさんは仕事が終わると毎日現場に足を運んでチェックし、不安な部分は重松さんに電話やFAXで相談してきました。

5回の現場検査には25万円という費用がかかりましたが、数千万円を払って完成したものが建築基準法違反だったときのことを考えると、決して高い金額ではありません。

基礎の90%に問題あり
 
重松さんによると、大手住宅メーカーを筆頭に、ほとんどの工務店が基礎工事を専門の下請け業者にまかせています。現場監督がちゃんとチェックできるようであれば問題はありません。しかし、同時に複数の物件を抱えている監督の場合は、すべてをチェックしきれないことが多々あります。

また、現場監督が若くて経験が浅いため、基礎の施工をきちんとチェックできないことも少なくありません。「これまでの現場検査では、基礎の90%に問題がありました」と重松さんは話しています。特に多いのは、コンクリートの被覆厚みが不足しているケースです。

ある工務店の社長は、第3者のチェックが入ることを嫌がっていましたが、ハウジング・ナビの指摘にしたがって、配筋を全部直してコンクリートを打ったところ、「こんなよい基礎ができるとは思わなかった」と言ったそうです。工務店にとっても、チェックが入ることで下請け業者の施工精度が上がるのであればメリットが大きいと、最終的にわかってくれたのです。

施工者名・納期が書かれていない
 
もう1つ事例を挙げましょう。Cさんは、住宅メーカーD社と契約した後にハウジング・ナビへ相談に来ました。重松さんが契約書を見ると、施工業者の名前もなければ、納期も書かれていません。これでは施工自体を丸投げすることも可能なので、「丸投げは建築基準法違反ですよ」と指摘しました。

また、仕様書を見ると、土台に120mm角の防腐処理のツガ材を使っています。まるでローコスト住宅の仕様です。Cさんが契約した家は、建物だけで5000万円にもなる高額物件でした。本来なら土台にはヒバ材などを使い、断面はもっと大きなものを使うはずです。「高額物件でこの仕様は不当。施主を馬鹿にしている態度だと思いました」(重松さん)。

契約後の修正は難しいことですが、重松さんは契約の追加項目を書いてもらうようにアドバイスしました。すると、D社の対応の悪さが露呈してきたのです。技術的な質問をしても答えがなかなか戻ってこなかったそうです。

こんなことでは工事に入っても問題が浮上すると思い、「契約を白紙に戻して、始めからやり直したらどうか」と重松さんが提案したところ、Cさんはその通り契約を破棄しました。その後すぐにD社は倒産してしまったそうです。

インスペクション会社を使うコツ
 
まず、ユーザーは住宅を資産価値として考えることが重要です。注文住宅の場合は請負契約ですから、実物はなく、図面と契約書だけで数千万円の価値があると判断して契約をします。その価値があると自分では判断できないのであれば、ハウジング・ナビのような会社を使って、払う金額と同等の価値があるかを見極めてもらう。その後で契約すれば安心です。

また、多くの人が、木造住宅は「匠の世界」というイメージを持っていて、わからないことがあっても遠慮して大工さんに質問しません。声をかけると大工さんが気を悪くするという意識があるようです。それならば、専門家を雇って、図面と実物を見比べて問題点をチェックすればいいのです。その上で不明な点だけを工務店に聞けば、彼らの仕事の邪魔になりません。

建売住宅の場合は売買契約です。実物を見て購入するわけですから、最終的には自分の責任になります。しかし、壁の内側に隠れている柱や梁などの構造部材は、その時点では見えなくなっています。

床下や屋根裏に入れるところがあれば潜り込んで、「この程度の仕上がりなら他も大丈夫」と推測するしか方法はありません。素人目には難しい決断なので、やはり契約前の段階で専門家に頼んでチェックしてもらった方が絶対によいでしょう。

よい家をつくるために
 
重松さんはユーザーへのアドバイスとして、契約前に現場監督の実績を見せてもらうことを勧めています。「うちが依頼したのは大手住宅メーカーだから大丈夫」という考えではまだまだ甘いのです。施工する工務店、現場監督によって結果は大きく変わることを知っておかなければなりません。

「大工さんは実績を見せることを最初は嫌がりますが、最終的には施主の顔を知ってつくる方が、やりがいがあると言ってくれます。大工さんたちには、戦前の気概が残っています。ただの下請けとして仕事をこなすより、こういう人の家をつくるんだと思って仕事をする方がうれしいのです」。

さらに、重松さんは木造2階建ての場合でも簡易計算法ではなく、きちんとした構造計算をすることを勧めています。この理由は、簡易計算法では、建物を強くするために構造金物がたくさん必要になるからです。

構造の要となる柱の足元に、ボルトの穴が縦横に空いてしまっては、断面の面積は著しく下がります。しかし、品確法の基準はクリアしているので、それらは問題とはならないのです。

複雑な構造計算をするためには、構造専門の事務所に計算を依頼する必要がありますが、それによって、金物の多用を減らせます。また、大空間や大開口部のある空間を最小の部材で実現してもらえます。

このように、ハウジング・ナビは、安全で優良な家をつくるために、専門家の立場でアドバイスをしてくれます。家をつくるときに、安くあげることばかりを考えるのではなく、最初に必要な投資をしておけば、何十年と安心して住み続けられる家が取得できるのです。

そして何よりも、複雑な仕組みとなっている家づくりにおいて、ユーザーの心強い味方がいるのは、ありがたいことではないでしょうか。

(日経イエナビスト「我が家の耐震計画<新築編>第10回」掲載記事)

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